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経結膜的眼窩脂肪移行術について

経結膜的眼窩脂肪移行術(経結膜的ハムラ法、裏ハムラ)と他の施術の違いについて

経結膜的眼窩脂肪移行術について

経結膜的眼窩脂肪移行術(経結膜的ハムラ法、裏ハムラ)と他の施術の違い
下眼瞼の名称の参考図説

まず、経結膜的眼窩脂肪移行術は、目の裏側、結膜側より(下まぶたの縁から5-7ミリくらいの位置)2センチ程度の結膜切開をおいて眼窩脂肪を納めている膜(隔膜)の層を剥離していきながら、bのへこみになっている部分よりさらに骨膜の上で5-7ミリ程度剥離をすすめる。完全にbの癒着が解除されたことを確認ののち、aのふくらみの原因となっている眼窩脂肪を、隔膜ごと骨の縁で近いところから切れ目をいれていき、眼窩脂肪をそれを覆う隔膜ごと、bのへこみを矯正させるように敷き詰め直して固定する。また、ミッドフェイスリフトを行うときは(まれに多少剥離範囲をくわえることもある)頬を内側から何度もあげてみて、一番綺麗に頬が上がる点を少々太い糸でこれもさらにbの溝をうめるよう、止めていく。結果として、ねらいは、abの凹凸を確実に平均化すること、また、ミッドフェイスリストを加えるなら、頬の位置を高め、法令線を若干薄くして、実はbのボリュームも上げてくるのが目的の手術といえよう。

大きな腫れや、結膜刺激による涙・めやにが多くなる、軽度の内出血などは、一週間前後で収まる。通常お化粧や伊達眼鏡等をうまく利用していただき、一週間前後で社会復帰をしている方がほとんどである。ただし、傷はとりあえず治る期間(これがこの方法では1週間前後と考えられる)と、傷が本当に落ち着く期間とにわかれ、傷が落ち着くまでには、顔の傷は通常平均6カ月を要する。擦り傷が治るときに、かさぶたが取れて治る(とりあえず傷が閉じる時期)が、あとで意外と赤くなったり固く盛り上がったりして、本当に真っ白に落ち着くのには数カ月(首から下の傷では1-2年かかることもまれではない)かかり、見た目がわるかったり、痛痒かったり、さまざまな違和感がしばらく残るのを経験された方は多いだろう。手術も全く同じて、凹凸を矯正するなら何らかの手術が一番効果があるのは事実であるが、手術とは、簡単にいえば、我々外科医が、綺麗に切って、糸で縫うことで新たな構造を作り直し、このように癒着して新たに傷が治ってくださいと、神様に頼む行為である。腫れ・内出血がなるべく少なくなるコントロールはある程度できても、この傷が落ち着くという流れそのものは、その人の肌質・体質、あとは神様がきめるとしか、言いようがない。この施術も同じで、小さなむくみやかたさ、感覚の違和感などが収まるのは、1-2カ月をピークに3-6ヶ月、まれに一年を超える人もいることをご承知おき願いたいが、落ち着かない傷というのはないし、これは、他の手術も当然、同じである。

A 下眼瞼たるみとり(非常に剥離範囲もすくなく、皮膚と筋肉のみをちょっとだけ取り去るタイプ)と比較して:

これは図にしめす、dに皮膚切開をおいて、ややcの斜線部分をややひきあげ、縫合して手術を終了するものである。dの部分の傷はのこるものの、c付近の多少のハリと厚み(下まぶたから遠い皮膚のほうが、やや厚みを持つため)をもたらす。ただ、剥離範囲は非常に狭いことが多く、bの溝やaのふくらみには全く来効果を示さない。ただし、手術範囲がせまいので、傷の落ち着きは(みためには)早い。

B 下眼瞼たるみとり+眼窩脂肪移行術と比較して:

いわゆる本当の意味での狭義のハムラ法である。一般には、ハムラ法、といえばこの方法をさすことが多い。表側のdの切開よりbの溝を超えるまで剥離を行ってaのふくらみ(眼窩脂肪)を分散させ、時には一部ふくらみ部の脂肪を多すぎる場合には切除して、aのふくらみを減らして、bの溝もうめ、a,bの高さを平均化することを目的としている。図では、一番矯正に大切な内側を中心に書いたが、この眼窩脂肪移行の操作は、目の下の骨の淵に沿って、内側から外側まで行うことが多い。昔は脂肪を取る傾向にあったが、かえって目周りのボリュームがなくなって老けた印象になることも多いことから、最近では眼窩脂肪はなるべく温存される傾向にある。この方法は脂肪の処理をしたのち、前述のAの単純な皮膚たるみとりよりさらにアグレッシブに皮膚と筋肉のたるみを取り除き、通常はcの皮下の筋肉を目じりの骨膜にかっちりと止めるなど、この方法で起きうる最悪の合併症である下まぶたの外反を防ぐべく処理をして、dで縫合する。経結膜的眼窩脂肪移行術と比較して、外反が起きないように目尻に皮膚や筋肉をしっかりと止める操作をするために、2か月前後は、いわゆる釣り目のような状況となり、傷も表に露出する(もちろん術者が適切に施術・縫合を行えば、最終的には傷は素人レベルで分からなくなるが、しっかり緊張をとって、丁寧に縫合しないと、傷が広がって目だったりするケースもしばしばみられる)。ただし、半年前後を目安に、傷の落ち着きとともに釣り目や表情の硬さも改善する。もちろん、経結膜的眼窩脂肪移行術より剥離範囲も広いので、患者さんが感じるあらゆるダウンタイム(急性期の腫れや内出血と、傷が落ち着くまでの時間)は、長く感じることが多い。また、この方法は、確かに合併症なく行えば、経結膜的眼窩脂肪移行術より、たしかに小さな皮膚のたるみ・微妙なちりめんじわの改善(いずれにしても、ちりめんじわは、手術では改善しない。それまで皮膚を引き延ばして切除しすぎると、下まぶたの外反を起こすためである。当院では当座、ちりめんじわには、炭酸ガスレーザによる処置をとることとしている)とcの近辺のボリュームが改善することはメリットと思われる。ただ、経結膜的眼窩脂肪移行術にくらべて、患者の感じるダウンタイムはさらに長いこと、経結膜的眼窩脂肪移行術ではc付近のボリュームは改善こそしないものの、下まぶたから5-7ミリは、手技的に全くいじらないため、c付近のボリュームが悪化することはない。さらに、皮膚切除の量が多ければ、この手法では、目の下の涙袋(個人差はあるが、笑ったときに特にめだつ下まぶたの縁からの5-7ミリに下まぶた前幅に比較的均一に存在するふくらみ。目袋というaのふくらみのことではない。通常目袋は治したいが、涙袋は温存したいという希望を持つ方がほとんどである)を失うこともあり、患者さんがこれを気に入っていた場合にはトラブルとなる。ただ、その場合には、皮膚とその下の筋肉(眼輪筋)をはがし、筋肉はなるべく温存して、そのふくらみを保つよう処理をして、皮膚のたるみのみ切除していくなどすれば、ある程度対処は可能である。また、広義のハムラ法では、さらにミッドフェイスリフトも追加する。これは、トータルフェイスリフトなどと同時に行わなければほぼ不可能な処置で、狭義のハムラ法のみにミッドフェイスリフトを安易に組み合わせると、下まぶたの外反のリスクはぐっと高まる。それに対し経結膜的眼窩脂肪移行術では、表の皮膚や筋肉をいじらないために、より安全にa,bの凹凸の矯正やミッドフェイスリフトの追加ができる。現に経結膜的眼窩脂肪移行術において、今まで外反等の合併症は皆無(五十代以上のかたや、お顔の構造的に下のほほより目が手前に出ている人などは、1か月を中心にかるく外反を呈することがあるが、これも2カ月で皆改善している)であるし、ミッドフェイスリフトを同時に行えることが経結膜的眼窩脂肪移行術の最大のメリットであるといっても過言ではないと考える。

C 経結膜的眼窩脂肪脱脂と比較して:

経結膜(下まぶたの裏から)から、aの脂肪をぬき、aの部分のふくらみのみを改善させる手術。aのふくらみはむしろへこますくらいに改善されることが多いが、bの溝は埋まらない。また、小さなしわやたるみがひどくなることが必至であるが、手技が比較的容易なのと、傷が小さく、落ち着きがはやいことと、これも表に傷はつかないため、比較的よく用いられる方法だが、かえって老けた印象になってしまうことが多い。ただ、傷をつける範囲が小さいために、腫れも内出血も少なく、傷の落ち着きがはやくみえる、というだけのはなしであり、実はこの施術の完成も約半年から人によってはそれ以上がかかることは、手術という傷をつける処置を行った以上、他の施術と同じである。半年後、一年後にどっと小じわが増えた、などという意見をきくのは、この時点で傷の硬さがおちつき、本当の結果が出たからであると考えるのが自然である。ただ、本当にお若くて皮膚のしっかりした方で、bの溝はほぼ目立たず、aのふくらみのみが目立つ場合には、検討していい方法だろう。

D 単純な脂肪注入と比較して:

aのふくらみがあまり目立たず、bの溝のみが目立つケースの場合には、この選択肢はあると考える。実際、昔から、極力ダウンタイムを減らしたいこういうケースの患者さんでは、この施術をおこなう。ただ、将来本当に皮膚が薄くなり、abの凹凸がはっきりしてくる可能性は高いし、維持力には少々かけるかな、という印象と、本当に薄くなってきたときには、なるべく丁寧に注入しても、微妙な凹凸等が気になってくる可能性は否定できない。私自身は、他院で脱脂をされすぎた場合、修正方法として、この方法も有用と考えるが、まずはミッドフェイスリフトをすることをお勧めしている。ダウンタイムもそんなに変わらないし、なにより自然にほほのボリュームがbの付近に戻るためである。その後、どうしても必要な個所にのみ絞って最低限の脂肪注入を(とにかく入れすぎない様)術後3-6ヶ月をまってから追加することとしている(ただし、この修正方法の是非についてはあくまで私見である)。

E 経結膜的眼窩脂肪脱脂+脂肪注入と比較して:

経結膜的眼窩脂肪移行術+ミッドフェイスリフトの手術を考慮するなら、一番の候補としてあげられるのが、この方法であろう。脱脂だけでは、前述のようにかえって老けたような印象になるために、また、ほほを高く見せることを目的に、脱脂した脂肪や・あるいは他の部位から適宜採取した脂肪を注入する方法である。理にかなっているし、手技もそんなに煩雑ではない(ただし、実は脂肪注入の本当に細かいテクニックが非常に大切)ので、よい方法だと思う。ただ、脱脂した脂肪を注入するのであれば、ダウンタイムもさほど変わらないし、一度採取して、血行を断たれた脂肪を、どれだけ厳密に定着させるのかわからない不確定要素をより取り除くなら、より生きのいい(脂肪移行は、血流のある眼窩脂肪をそのまま移行させるので、一度取った脂肪のように仮死状態になることはない)脂肪を移行させたほうが、確実だし、ミッドフェイスリフトを加えたほうが早いし、本当に年をとった時も自然なのではないか、と個人的に考えている。脂肪注入では、脂肪がどれだけ定着するかは、その医師の技量とその人の体質にかかわっており、これを一度でピタッと決められるなら(特にほほのボリュームを上げるくらいまで)こちらを選択するのもありだろう。ちなみに、当院では初めて下まぶたの手術を経結膜的脂肪移行術(+ミッドフェイスリフト)を行った方では、確かにまっ平らにならなくとも、追加で脂肪注入をさせていただいた経験はゼロである。ただし、脱脂後であり、脂肪が極端に少ない症例などでは、前述のように最低限の脂肪注入を追加することがしばしばある。

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